日本癌治療学会

 開催日  平成15年11月22日 〜 24日
 演題   機能性食品の意義

      関西医科大学外科
      講師 川口 雄才

 現在、早期癌に対する治療法は、ほぼ確立され、その予後も良好な成績となってきておりますが、末期癌であるステージW、再発・転移癌症例に対しては、いまだに治療法は確立されておらず、予後も不良であるのが現状であります。
 そこで今回我々は、乳癌、胃癌、大腸癌のステージW、再発・転移癌症例に対して、西洋医学として手術、化学療法、放射線療法などを行い、免疫療法としては機能性食品である紫イペエキスを用い、その有効性を検討致しました。
 紫イペとは、南米ブラジルのアマゾン川流域の樹木でありまして、その製造法は紫イペの内部樹皮を採取し、それを煮込んでエキスを抽出しソフトカプセルに注入したものであります。


紫イペ成分分析表

紫イペエキスの成分分析ですが、基礎成分として蛋白質、脂質、糖質などが含まれており、その他に各種ビタミン類や亜鉛を初めとして様々なミネラルが豊富に含まれております。
また、ヒ素やカドミウムなど有害な物質は検出されておりません。

紫イペによる副作用発現率(n=120)

機能性食品に求められる事として、免疫賦活作用があるのかないのかといったことの他に、副作用が無いという事が最低必要条件かと思われます。そこで紫イペエキスでありますが、その作用機序は主に抗酸化作用であり、また、その副作用は120例中、肝機能障害、腎機能障害、消化器障害、精神・神経障害、皮膚障害、骨髄抑制などはすべて認めておりません。


胃癌症例の内訳(n=43)

1998年1月より2003年3月までに当科で経験した胃癌症例は43例で、年齢は36歳から81歳までの平均61.9歳であり、また、男女比は4:1でありました。症例の内訳はステージWが34例、転移癌症例が9例でありました。

胃癌症例の治療方針

胃癌症例の治療方針ですが、手術療法としては、まず腹膜転移については多量の腹水貯留を認めず、またある程度腹膜転移が限局化されている症例に対しては腹膜切除術を施行しております。
次に肝転移についても単発の症例に対しては切除術を施行し、多発の症例でもマイクロターゼによる焼灼術でコントロールが可能な症例には肝切除術を施行しております。
化学療法は患者さんのQOL(生活の質の向上)を最優先に考えて、副作用を抑えながら抗腫瘍効果を得ることを目的として低用量の投与といたしました。すなわち、UFT-Eを1日300mg経口投与し、CDDPは週一回10mgを4回点滴投与いたしました。維持療法はUFT-Eのみで、CDDPは必要に応じて2〜3ヶ月毎に投与いたしました。免疫療法としては紫イペエキスを1日900mg投与いたしました。


大腸癌症例の内訳(n=52)

大腸癌症例52例の内訳ですが、年齢は35歳から78歳までに平均59.4歳であり、男女比は1.5:1でありました。この52例中、20例がステージW症例であり、残り32例が転移症例でありました。

大腸癌症例の治療方針

大腸癌症例の治療方針でありますが、手術にかんしては胃癌症例とほぼ同様でありますが、肺転移に対しても単発であれば肺部分切除術を行っております。
化学療法も低用量化学療法が基本でありまして、5'-DFURは1日600mg経口投与し、CPT-11は週一回40mgを4回点滴投与しております。また維持療法は5'-DFURのみで、CPT-11は必要に応じて2〜3ヶ月毎に投与しております。
免疫療法としては、紫イペを1日900mg投与しております。


乳癌症例の内訳(n=25)

25例の乳癌症例の内訳でありますが、年齢は26歳から70歳までの平均50.8歳でありました。
このうち1例のみがステージW症例でありましたが、残りの24例が転移症例でありました。

乳癌症例の治療方針

乳癌での手術療法は、皮膚転移に対しては切除、再建手術を施行し、肝転移に関しても患者さんの希望があれば肝切除術およびマイクロターゼによる焼灼術を施行しております。
乳癌でも化学療法の基本は低用量でありまして、5'-DFURは1日600mg経口投与し、DOCは週一回20mgを4回点滴投与しております。また維持療法は5'-DFURのみで、DOCは必要に応じて2〜3ヶ月毎に投与しております。
免疫療法としては紫イペエキスを1日900mg投与しております。
この他、骨転移、脳転移に対しては随時、放射線療法を行っております。


胃癌におけるstageIV、再発・転移症例の累積生存率
(n=43)

胃癌の累積生存率ですが、全体として中央値は2.1年で、1年生存率は53.5%であり、5年生存率は25.6%と、他施設での累積5年生存率の0〜16.6%よりも良好な結果が得られたものと思われます。
またステージW症例と転移癌症例の累積生存率を比較検討いたしますと、有意差は認められませんでしたが、転移癌症例のほうが良好な傾向にありました。さらに、手術にて切除し得た症例と出来なかった症例を検討してみますと、切除し得た症例のほうが有意に累積生存率が良好でありました。

大腸癌におけるstageIV、再発・転移症例の累積生存率
(n=52)

大腸癌症例の累積生存率ですが、全体として中央値は2.6年で、1年生存率は80.8%であり、5年生存率は44.3%と、他施設での累積5年生存率の0〜16.9%よりも良好な成績が得られたと思われます。またステージW症例と転移癌症例を比較検討いたしますと、若干転移癌症例のほうが累積生存率は良好な傾向にありました。
さらに大腸癌症例においても胃癌症例と同様、手術にて切除し得た症例のほうが有意に累積生存率は良好でありました。


乳癌におけるstageIV、再発・転移症例の累積生存率
(n=25)

乳癌症例における累積生存率ですが、全体として中央値は3.2年で、1年生存率は92%であり、5年生存率は52%と、他施設での累積5年生存率の0〜41.6%よりも良好な結果が得られたものと思われます。


今回我々は、乳癌、胃癌、大腸癌症例のステージW、再発・転移癌症例に対して、手術、低用量化学療法、機能性食品である紫イペエキスを併用することにより良好な結果が得られました。
また、末期癌症例に対して、紫イペエキスを投与することにより、食欲増進作用が得られ、また活力の向上などQOL(生活の質の向上)の改善が認められた。